放浪するアリ

引き続き読書。

放浪するアリ~生物学的侵入をとく~ベルンハルト・ケーゲル /著

外来生物の話だ。アクアリストにはお馴染み、淡水のシクリッド。アフリカ最大のビクトリア湖のシクリッドは、食用目的のナイルパーチをバケツ一杯放流したのがきっかけで絶滅したといわれる。日本でもブラックバスなんかが問題になっている。

こういった外来種を人間が海外から導入した場合、最初は保温したり逆に日除け等で温度管理したりと人間が管理する必要がある。その後、たまたま低温に強い変種だとかが発生し環境に適応、自然発生するまでには数十年から数百年かかる。これをタイムラグというのだけれど、現にヨーロッパでは環境的に繁殖は不可能で、釣り用に毎年放流されていたニジマスが100年経った近年、自然繁殖が確認されたそうだ。こういった生物の場合、テンズ・ルールと言うのがあって、種の輸入→野外での初めての自然発生→自己存続する個体群の発生→有害生物への発展という各ステップに進むのがそれぞれ10%の確率なんだそうだ。つまり1,000種類の生物を輸入したら、1種類は有害生物として猛威を振るうことになる。かの有名なガラパゴス諸島ですら、全植物の1/4が外来種なのだそうだ。

先日、パッションフルーツの種を購入しオマケでゴールデンシャワーツリーの種がついてきた。喜んで植えてみたけれど、南国のこの植物、現時点では霜に当たったら一発アウトなようだけれど、温暖化と種としての多様性でたまたま岐阜の気候に適応しないとも限らない。数年後、岐阜中の桜を駆逐して大問題になっていたら私のせいです。

他にも多くの興味深い分析が載っていた。自然に興味がある人は是非読んで欲しい。そして、概要だけなら中学か高校の授業1時間でざっと説明してあげると、非常に環境的には効果があると思う。細かい話を飛ばしてブラックバスは悪い魚だから駆除します、みたいな教育は、生物を悪者にしている。悪いのは海外から持ち込み、放流した人間なのだから。

Leave a Comment