Twitterで紹介されていて興味を持ったので雨の週末、図書館にこもる。関と各務原の図書館がうまいこと分散していて、探せばだいたいどちらかにはあるので助かる。
土の文明史~ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話~デイビッド・モントゴメリー/著
土がどうやって作られるか、ということ。土って地面じゃん、と言うことではなく、土壌の話だ。岩や堆積物等を微生物やミミズが分解し、かつ石等は相対的に地中に引きこまれていく。こうして表土が出来上がる。落ち葉等の堆積物や洪水等で運ばれた有機物が養分となり、耕作が可能となる。ダーウインの研究によると、ミミズたちによって一世紀で1~2cmの土壌が出来上がるようだ。
で、ここを人間様が好き勝手に使う。ただ種をまいているうちは良かったのだけれど、鉄の鍬を発明したことで、一気に侵食が進む。耕し、雑草を取り除き、作物を作った挙句に表土を裸のまま放置する。一世紀で数センチしか作られない土壌はガンガン侵食され、多くは風雨によって流される。連続で作物を生産した土地は痩せこけ、ゆえに近隣の土地を新たに耕し移動する。この悪循環。肥料を与える、という概念は近代のものだ。ましてや窒素、リン酸、カリウムの3大養分を化学肥料で補うだけでは駄目なことに気付くのはごく最近のこと。押し流された表土は下流の川や運河、港を埋め尽くし、浚渫等の対応に莫大な費用がかかっている。
近代では、敷き藁や堆肥の施肥等を行えば、1ドルの投資で3ドル相当の収穫増を見込めると言われている。さらに土壌や水の保護に1ドル投資すれば5~10ドルの上記修復費用を節約できるようだ。土地の多い彼の国ではそんな科学的根拠があっても、隣の土地に引っ越せば済むのでそういった投資には消極的だったらしい。日本のように土地が限られていて、人糞を利用した循環農法が確立しているなんてことは珍しいのだ。(逆に日本では人糞まいてるから最近まで野菜の生食の習慣がなかった)
以前、ソイリューションという考え方を紹介したけれど、現在の農業技術と設備ですら70億人分の食料は生産できているのだ。にも関わらず足りていないのは、農作物の状態で摂取せず畜産に使用したり、先進国で肥満が問題になるほど過剰に消費しているからだ。じゃあ明日からオートミールと大豆しか食べない、と言うわけにはいかないのだけれど、この問題、概念として1人でも多くの人に知っていてもらいたい。