下町ロケット

図書館で予約してたのが順番回ってきたので大急ぎで読む。言わずと知れた直木賞受賞作だ。直木賞は大衆小説よりなので読みやすくて好きだ。

内容は中小企業対大企業の人間ドラマ。絵に書いたような展開なのだけれど、技術的な面や、知っているようで知らない特許なんかの知的財産面の描写が面白い。いや、経営者ならそれは知ってろよ、なんて突っ込みながら。中小企業診断士で随分勉強した分野だし、そもそもエンジニアなので両面から楽しめた。というか、下請け企業がいじめられる→実は凄い技術力なことが後から分かる→親会社手慌てる→ものづくりバンザイ!という、お約束の展開なのでなにも心配せず、ガンガン読み進められる。痛快なり痛快なり。

とはいえ、下請けから搾取して自分だけはボーナスもらう大企業の体質や、中小企業側の防戦一方でなにも対策できていない消耗戦といった体質も生々しく、小説の物語だと高をくくっている場合ではない。「何か勘違いされていませんか?うちはこんな取引していただかなくても一向に困らないんですよ」というような内容の大見得を切るシーンがあったけれど、それはたまたまこの小説の中小企業は技術力と特許があったからであって、技術も資本もなければ倒産するか買収→解体の道をたどるしか無かっただろう。

製造業はQCD(品質、価格、納期)のバランスに尽きる。合計値は同じでも、すべて平均的な企業では生き残れないのかもしれない。にも関わらず、殆どの会社が景気が回復するまでコストカットや設備投資の凍結でしのいでいる。多少納期はかかるけど圧倒的な品質、多少高いが即日出荷、のような差別化にすら取り組んでいない会社が多いだろう。こうなった以上、何かしら変えないことこそ一番のリスクなはずだ。

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